
不動産の相続評価額はどう計算するのか?家屋や建物の路線価倍率をわかりやすく説明
相続税評価額の基本を理解する
時価との違い・評価の仕組みとは
不動産の相続税評価額とは、相続が発生した際に相続税を計算するために使用する、国税庁が定めた基準による評価額です。一般に「財産評価基本通達」に基づいて算出され、実際の市場価格(時価)とは異なります。
相続税評価額は、おおよそ時価の約80%程度とされています。したがって、不動産の売却時に目安とする査定価格や取引価格とは大きく異なる場合があります。相続税申告の際にこの違いを理解していないと、税額を誤って計算してしまうリスクがあります。
① 評価の根拠
国税庁の「財産評価基本通達」に基づく独自基準。時価の約80%が目安とされる。
② 土地と建物を分けて評価
不動産は「土地」と「建物(家屋)」に分けて評価。それぞれ異なる方式を用いる。
③ 評価方式は地域で異なる
土地は「路線価方式」または「倍率方式」。どちらを適用するかは土地の所在地による。
- 相続税評価額 ≠ 売買価格(時価)。両者は別物であることをまず押さえる
- 土地は「路線価方式」or「倍率方式」のどちらかで計算する
- 建物(家屋)は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になる(居住用の場合)
- 相続税申告の期限は「相続開始の翌日から10ヶ月以内」と定められている
- 評価が複雑な不動産は税理士・不動産鑑定士への相談が安心
| 評価対象 | 評価方式 | 適用基準 | 参照資料 |
|---|---|---|---|
| 土地(市街地) | 路線価方式 | 路線価が設定された地域 | 国税庁 路線価図 |
| 土地(農村・郊外等) | 倍率方式 | 路線価が設定されていない地域 | 国税庁 評価倍率表 |
| 建物(家屋) | 固定資産税評価額 × 1.0 | すべての建物(居住用・事業用) | 固定資産税課税明細書 |
| 賃貸建物 | 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合) | 貸家・アパートなど | 固定資産税課税明細書 |
| 建築中の建物 | 費用現価 × 70% | 固定資産税評価額未設定の場合 | 建築費の領収書等 |
相続税申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。この期限内に申告・納税が必要なため、相続が発生したらなるべく早く評価額の確認を始めることをおすすめします。遅れると延滞税が発生するケースもあります。

路線価方式による土地の評価
計算式と手順を詳しく解説
市街地など、路線価が設定されている地域の土地には「路線価方式」が適用されます。路線価とは、道路(路線)に面する宅地の1平方メートルあたりの評価額で、千円単位で表示されます。毎年1月1日時点の価格が、その年の7〜8月頃に国税庁のWebサイト「財産評価基準書」として公表されます。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」のWebページで確認できます。地図上で対象の道路を探し、その道路に表示されている数値が路線価です。なお、路線価は相続が発生した年のものを使用する必要があります。
路線価の確認
国税庁「路線価図・評価倍率表」ページで、相続発生年(1月1日時点)の路線価を調べます。対象の道路に表示された数値(千円単位)が路線価です。例えば「150D」なら150,000円/㎡を意味します(アルファベットは借地権割合)。
地積(面積)の確認
登記事項証明書(法務局で取得)または固定資産課税明細書に記載されている地積(㎡)を確認します。相続開始日に最も近い正確な数値を使用してください。実測面積と登記面積が異なる場合は専門家に確認が必要です。
補正率の選択・適用
土地の形状や利用状況に応じた補正率を国税庁の公開資料から確認します。奥行価格補正・不整形地補正・間口狭小補正・奥行長大補正・がけ地補正など、状況により複数の補正率を掛け合わせます(次セクションで詳述)。
計算・評価額の算出
「路線価 × 補正率 × 地積」の計算式で相続税評価額を求めます。複数の道路に面している土地(角地・二方路線地等)の場合は、より複雑な計算が必要になります。
計算式:200,000円 × 0.97 × 150㎡
補正率の種類と実務での使い方
土地の形状・条件ごとの調整方法
路線価方式の計算で重要なのが「補正率」の正しい適用です。土地は一つひとつ形状・奥行き・間口・地形が異なり、それらの差を評価額に反映するために補正率を掛け合わせます。補正率は国税庁の「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」等で確認できます。
| 補正の種類 | 適用場面 | 効果 |
|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 奥行距離が標準より短い・長い場合 | 奥行が不適切な土地の減額 |
| 不整形地補正 | 三角形・旗竿形・L字形など不整形な土地 | 利用しにくい土地の評価減 |
| 間口狭小補正 | 道路に面する間口が狭い場合 | 間口が狭い土地の評価減 |
| 奥行長大補正 | 間口に比べて奥行きが著しく長い場合 | 細長い土地の評価減 |
| がけ地補正 | 高低差があり、がけ地部分を含む場合 | 利用不能部分の評価減 |
| 側方路線影響加算 | 角地など二方向に道路が面する場合 | 利便性が高い土地の評価増 |
| 二方路線影響加算 | 前後両面に道路が面する場合 | 利便性が高い土地の評価増 |
| 容積率の異なる地域にまたがる場合 | 一つの土地が複数の容積率地域にまたがる | 割合按分による補正 |
補正率は、土地の状況に応じて複数を組み合わせて適用することがあります。例えば、間口が狭く、かつ不整形な土地であれば「間口狭小補正率」と「不整形地補正率」の両方を適用するケースもあります。ただし、各補正率の適用ルールは複雑で、適用順序や下限値の設定もあるため、慣れない方は専門家への確認を強くおすすめします。

倍率方式による土地の評価
路線価がない地域での計算方法
路線価が設定されていない地域の土地は「倍率方式」で評価します。農村部・郊外・山林・原野など幅広い地域に適用されます。都市部に多い路線価方式より計算はシンプルですが、正確な情報収集が必要です。
倍率方式で必要な情報は2つだけです。「固定資産税評価額」と「評価倍率」。どちらも公的な資料から確認できます。
| 必要情報 | 内容 | 入手方法 |
|---|---|---|
| 固定資産税評価額 | 市区町村が定めた土地の評価額 | 固定資産税納税通知書・課税明細書/市区町村役場・都税事務所で「固定資産税評価証明書」を取得 |
| 評価倍率 | 評価額に乗じる地域ごとの倍率(例:1.1倍) | 国税庁「評価倍率表」(Webサイトで閲覧・検索可能) |
| 方式の判定 | 路線価方式か倍率方式かの確認 | 国税庁「財産評価基準書・路線価図・評価倍率表」ページで所在地を検索 |
計算式:8,000,000円 × 1.1
評価方式の確認
国税庁「路線価図・評価倍率表」ページで所在地を検索。路線価が設定されていない地域(「倍率地域」と表示される場合が多い)であれば、倍率方式を適用します。
固定資産税評価額の確認
毎年春に届く固定資産税の課税明細書(または納税通知書)に記載されています。紛失した場合は市区町村役場・都税事務所で「固定資産税評価証明書」を発行してもらえます。相続開始の年度のものを使用してください。
評価倍率の確認
国税庁の「評価倍率表」で所在地・地目ごとの倍率を確認します。農地・山林・雑種地など地目によって倍率が異なるため、対象の地目(登記簿上の地目または現況地目)に対応する倍率を確認しましょう。
計算・評価額の算出
「固定資産税評価額 × 評価倍率」で相続税評価額を算出します。固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われますが、相続税評価には相続発生時点の評価額(当該年度の課税明細書の数値)を使います。
建物(家屋)の相続税評価額
固定資産税評価額がそのまま評価額に
建物(家屋)の相続税評価額は、土地に比べてシンプルな算定方法です。原則として「固定資産税評価額 × 1.0」、すなわち固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。自宅や事業用に使っている建物(自用家屋)はこのシンプルな計算が適用されます。
固定資産税評価額は、毎年春に郵送される固定資産税の課税明細書や、市区町村役場・都税事務所で発行される「固定資産税評価証明書」で確認できます。固定資産税の評価替えは3年ごとに行われるため、相続発生時の最新の評価額を用いることが大切です。

- 自用建物(居住用・自用事業用):固定資産税評価額 = 相続税評価額
- 固定資産税評価額は課税明細書または固定資産税評価証明書で確認
- 3年ごとの評価替えがあるため、相続発生年度の最新の値を使う
- 賃貸用建物や建築中の建物は別の計算方法が適用される(次セクション参照)
賃貸用建物・建築中家屋の特別評価
借家権割合・費用現価を活用する
建物の使用形態によっては、基本の「固定資産税評価額 × 1.0」ではなく、特別な計算方法が適用されます。特に賃貸用建物(貸家・アパート)と建築中の建物は要注意です。
| 建物の形態 | 計算式 | 特徴・備考 |
|---|---|---|
| 自用(居住用・自用事業用) | 固定資産税評価額 × 1.0 | 固定資産税評価額がそのまま相続税評価額 |
| 賃貸用(貸家・アパート等) | 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合) | 借家権割合(通常30%)・賃貸割合により減額 |
| 建築中の家屋 | 費用現価 × 70% | 固定資産税評価額がない建築途中の建物 |
計算式:20,000,000円 × (1 − 0.3 × 1.0) = 20,000,000円 × 0.7
賃貸割合とは、貸している部分の床面積 ÷ 全体の床面積で計算します。相続発生時に一部が空室の場合、賃貸割合が下がり減額幅も小さくなります。例えば、全8室のうち6室入居中なら賃貸割合は75%(0.75)となります。
相続税申告に向けた実務チェックリスト
準備すべき書類と確認事項
相続税申告の期限(相続開始の翌日から10ヶ月以内)に向けて、必要な書類と確認事項を早めに整理しておくことが大切です。以下のチェックリストを参考にしてください。
相続財産の全体把握
不動産(土地・建物)の一覧、預貯金・有価証券・生命保険などすべての相続財産を把握します。固定資産税の課税明細書は特に重要な書類です。
土地の評価方式の確認
国税庁の路線価図・評価倍率表で、所有する土地が路線価方式・倍率方式のどちらを適用するか確認します。
必要書類の収集
登記事項証明書・固定資産税課税明細書・固定資産税評価証明書・路線価図・評価倍率表を準備します。土地の形状・間口・奥行きがわかる資料(公図・地積測量図)もあると便利です。
評価額の計算・確認
路線価方式または倍率方式で土地の評価額、固定資産税評価額で建物の評価額を算出します。複雑な補正率の適用が必要な場合は税理士・不動産鑑定士への相談を検討してください。
相続税申告書の作成・提出
評価額をもとに相続税申告書を作成し、相続開始の翌日から10ヶ月以内に税務署へ提出・納税します。期限を過ぎると延滞税が発生するため注意が必要です。
- 登記事項証明書(土地・建物)-法務局で取得
- 固定資産税課税明細書(または固定資産税評価証明書)
- 公図・地積測量図(土地の形状確認用)
- 路線価図(国税庁Webサイト)または評価倍率表
- 賃貸物件の場合:賃貸借契約書・入居状況一覧(賃貸割合確認用)
- 建築中建物の場合:工事請負契約書・費用の領収書等
- 被相続人の戸籍謄本・住民票の除票
よくある質問(FAQ)
相続評価額に関する疑問を解決
まとめ
不動産の相続税評価額は、土地と建物で評価方法が異なります。市街地の土地には路線価方式、路線価のない地域には倍率方式を適用し、建物は固定資産税評価額がそのまま評価額になります(居住用・自用の場合)。賃貸物件や建築中の建物には特別な計算式が適用される点も重要なポイントです。
土地(市街地)
路線価方式:路線価 × 補正率 × 地積。補正率の正確な適用が重要。
土地(農村・郊外)
倍率方式:固定資産税評価額 × 評価倍率。倍率は国税庁評価倍率表で確認。
建物(自用)
固定資産税評価額がそのまま相続税評価額。3年ごとの評価替えに注意。
賃貸建物
固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)。大幅な減額も可能。
相続という大切な場面で不安を残さないために、評価方法や必要書類を事前に確認しておくことが重要です。ご自身での計算が難しい場合や、相続した不動産の売却・活用をお考えの場合は、守口市・寝屋川市エリアの不動産専門家へお気軽にご相談ください。
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