相続した空き家は、
売る前に「3,000万円控除」が
使えるかどうかで決まる
誰も住まなくなった実家を売ると、譲渡所得に所得税と住民税がかかります。一定の要件を満たす相続空き家なら、その譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。要件・計算・書類・期限を、順番に整理していきます。
正式名称:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(租税特別措置法第35条第3項)
- 控除できる金額
- 最大 3,000万円
- 売却の期限
- 相続開始から3年目の年末
- 制度の適用期限
- 令和9年12月31日
相続で引き継いだ空き家や、長年使っていない実家をどうするか悩んでいませんか。
売却すると税金がどれくらいかかるのか、3000万円控除と呼ばれる特別な制度で本当に節税できるのか、分かりづらい点も多いはずです。
固定資産税は毎年かかり、庭木や建物の傷みは年々進み、近隣への配慮も必要になるため、「そのうち考えよう」と先送りするほど負担が重くなっていきます。
しかし、この特例の仕組みと要件を正しく理解しておけば、相続した空き家の売却で納める税金を大きく抑えられる可能性があります。
実際、譲渡所得が3,000万円以内に収まるケースでは、特例の適用可否だけで数百万円単位の差が生まれることも珍しくありません。
このページでは、相続と税金の基本から、空き家の3000万円特別控除の条件、具体的な節税効果の考え方、必要書類と手続きの流れ、よくある失敗例まで順を追って解説します。
相続した不動産の扱いに迷っている方が、損をせず安心して一歩を踏み出せるよう、実務で押さえておきたいポイントも丁寧にお伝えしていきます。
相続空き家の3000万円特別控除とは何か
制度の概要と目的
相続した空き家やその敷地を売却する場合には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」の制度を利用できる可能性があります。
これは、一定の条件を満たしたうえで売却したときに、譲渡所得から最大3,000万円までを差し引いて税額を計算できる仕組みで、実務では「空き家特例」「相続空き家の3000万円控除」とも呼ばれます。
相続により取得したまま利用していない家屋を早期に手放しやすくし、空き家の発生や放置を抑えることを目的として設けられました。
背景には、耐震性の低い古い住宅が管理されないまま各地に残り、防災・衛生・景観の面で地域の課題になっているという事情があります。
そのため、この特例は「古い実家を、そのまま放置せずに市場へ戻す」ことを後押しする制度として設計されている点が特徴です。
適用期間は、相続等により取得した空き家やその敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に譲渡した場合が対象とされています。
控除を使うと税金はどう変わるのか
通常、土地建物を売却して利益が出ると、その譲渡所得に対して所得税と住民税がかかります。
この特別控除を使うと、計算上の譲渡所得から最高3,000万円まで差し引いた残りの金額にのみ税率を掛けることになります。
例えば、譲渡所得自体が3,000万円以下であれば、控除により課税される譲渡所得が0円となり、所得税と住民税が発生しないケースもあります。
控除しきれずに残った部分だけが課税対象になるため、「税金がゼロになる」か「大幅に軽くなる」かのどちらかになるのが、この特例の効果です。
そのため、相続した空き家を売却する際には、適用の可否によって実際の税負担や手取り額に大きな差が生じることが少なくありません。
売却価格そのものを数百万円上げるのは簡単ではありませんが、特例を適切に使えば同じ売却価格でも手元に残る金額が変わります。

対象になるのは「相続した空き家」だけ
もっとも、この特例は相続した空き家やその敷地であれば必ず使えるわけではなく、対象となる不動産と譲渡の内容が厳密に定められています。
対象となるのは、亡くなった方が相続開始の直前に一人で居住していた家屋とその敷地を相続等により取得し、一定の要件を満たしたうえで売却する場合に限られます。
さらに、相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに行った譲渡であることや、譲渡対価が1億円以下であることなどの条件も設けられています。
逆に言えば、被相続人が老人ホームへ入所していた場合や、家屋を取り壊して土地として売る場合など、実務でよくあるパターンにも配慮した緩和措置が用意されています。
このように、適用対象は「相続で取得した空き家・その敷地」と「要件を満たす譲渡」に限定されるため、事前に制度内容を整理しておくことが重要です。
令和6年からの改正で使いやすくなった点
この特例は改正が重ねられており、直近では令和6年1月1日以後の譲渡について、実務に影響の大きい変更が加わっています。
ひとつは、これまで売主側で引渡し前に済ませる必要のあった耐震改修や取壊しについて、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに行った場合も適用対象になった点です。
これにより、売主が解体費用を先に負担しなくても、古家付きの土地として現状のまま売却しやすくなりました。
もうひとつは、家屋と敷地を相続等で取得した相続人の数が3人以上の場合、1人あたりの控除額の上限が3,000万円から2,000万円に引き下げられた点です。
共有者を増やすことで控除枠を膨らませる動きへの対応であり、相続人が多いご家庭では影響が出やすいため、遺産分割の段階から意識しておきたい改正といえます。
| 項目 | 内容 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 正式な制度名 | 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除 | 「空き家特例」とも呼ばれる |
| 対象となる不動産 | 被相続人居住用家屋とその敷地 | 相続で取得した家屋と土地かどうか |
| 控除できる金額 | 譲渡所得から最大3,000万円控除 | 譲渡所得の金額と控除適用後の残額 |
| 適用される譲渡期間 | 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 | 売却予定日が期間内かどうか |
| 令和6年からの拡充 | 買主が翌年2月15日までに耐震改修・取壊しをした場合も対象 | 売買契約書に工事の取決めがあるか |
相続した空き家で3,000万円控除を受けるための主な要件
建物と敷地に関する要件
相続した空き家で3,000万円の特別控除を受けるためには、まず被相続人が生前、その家屋を自宅として実際に居住していたことが必要です。
加えて、その家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたことや、区分所有建物として登記されていない一戸建てであることなど、建物の構造や性質に関する要件があります。
昭和56年5月31日という日付は、いわゆる新耐震基準が導入される前に建てられた住宅を対象とするための線引きで、分譲マンションのような区分所有建物は対象外です。
さらに、相続開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいないことや、相続後に賃貸や事業用として利用していないことも条件として求められます。
このように、建物や敷地の状況が特例の対象として適切かどうかを、登記事項証明書や住民票などの資料をもとに事前に丁寧に確認することが大切です。
被相続人が老人ホームに入所していた場合
実務でよくあるのが、亡くなる直前は自宅ではなく老人ホームや介護施設で生活していた、というケースです。
以前は「相続開始の直前に自宅に住んでいたこと」が厳格に求められていましたが、平成31年4月1日以後の譲渡からは、一定の要件を満たす老人ホーム等への入所も対象に加えられました。
具体的には、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していたこと、入所してから相続開始の直前まで、その家屋を被相続人が物置などとして引き続き使用していたことなどが要件になります。
そのうえで、入所後に事業用・貸付用にしたり、被相続人以外の人が住んだりしていないことも必要です。
介護保険の被保険者証や施設の入所時期がわかる書類が確認資料になりますので、施設に入る前後の状況を整理しておくと手続きがスムーズです。
売却の時期・価格に関する要件
次に、特例を受けるためには売却の時期にも厳格な条件があります。
相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、家屋または家屋取壊し後の土地を譲渡し、引渡しまで完了している必要があります。
たとえば令和6年5月に相続が開始した場合、期限は令和9年12月31日となり、これは制度自体の適用期限とも重なるため、実質的にそれ以上の先送りはできません。
また、売却価格が1億円以下であることも要件で、この1億円は建物と土地の合計額で判定します。
共有者がいる場合は全員の持分の合計で判定され、先に一部を売っていた場合や、適用期間内に追加で売った場合も合算されるため、分割して売る予定があるときは特に注意が必要です。
さらに、耐震基準を満たしていない場合には事前に耐震改修を行うか、家屋を取り壊して土地として売却するか、買主が期限内に工事を行う取決めをしておくことも重要なポイントです。
相続人の人数と控除額の上限
さらに、相続人の人数や持分によって控除額の上限が変わる点にも注意が必要です。
相続人が1人または2人の場合は、相続人ごとに最大3,000万円まで譲渡所得から控除することができますが、家屋と敷地を相続した人数が3人以上の場合は、1人あたり2,000万円が上限となります。
とはいえ、相続人が3人であれば合計6,000万円の控除枠になるため、共有で相続したこと自体が不利になるわけではありません。
共有名義で相続した空き家を売却する際には、各相続人の持分に応じて譲渡所得を按分し、それぞれが自分の持分に対応する特別控除を適用する形になります。
なお、確定申告は共有者それぞれが自分で行う必要があり、誰か一人がまとめて申告することはできない点にも留意してください。
誰がどの程度の持分を有しているか、またどのように控除枠を活用するかを、事前に相続人間で整理しておくと安心です。
空き家特例のチェックリスト
- 被相続人が相続開始の直前に一人で住んでいた家屋か(老人ホーム入所の場合は別途要件あり)
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋か
- 区分所有建物(分譲マンション)ではないか
- 相続の時から譲渡の時まで、賃貸・事業・居住に使っていないか
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに引渡しが完了するか
- 建物と土地の譲渡対価の合計が1億円以下か
- 親子や夫婦など特別の関係にある人への売却ではないか
| 区分 | 主な条件 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 建物・土地要件 | 被相続人居住用の一戸建て | 昭和56年5月31日以前建築・区分所有でない |
| 居住実績要件 | 相続開始直前に被相続人が一人で居住 | 老人ホーム入所の場合は追加要件を確認 |
| 利用状況要件 | 相続後は空き家のまま | 賃貸・駐車場・事業利用がないか |
| 時期要件 | 相続開始から3年目の12月31日まで | 契約日ではなく引渡し完了日で判定 |
| 金額・人数要件 | 譲渡対価1億円以下 | 2人以下は各3,000万円/3人以上は各2,000万円 |
相続空き家を売却するときの税金計算と節税の考え方
譲渡所得の計算式と取得費
相続した空き家を売却するときの税金は、まず譲渡所得を正しく計算することが出発点になります。
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて求める仕組みで、「売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除 = 課税譲渡所得」と整理すると分かりやすいでしょう。
取得費には購入代金や購入時の仲介手数料などが含まれ、建物部分については所有期間に応じた減価償却相当額を差し引いて計算します。
譲渡費用には、売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙代、土地として売るために行った建物の解体費用、測量費などが含まれます。
ただし、古い不動産では購入時の売買契約書などが残っておらず、取得費が分からない場合も少なくありません。
このような場合には、税務上、売却代金の5%を取得費とみなす「概算取得費」の考え方を用いて計算することになります。
特別控除を使う場合と使わない場合の比較
次に、計算した譲渡所得に対して、相続空き家の3,000万円特別控除を使うかどうかで、税金の負担は大きく変わります。
特別控除を使わない場合は、譲渡所得にそのまま所得税と住民税の税率を乗じて税額を計算します。
一方で、特別控除の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を差し引いた残額にのみ税率がかかります。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、特別控除の適用により、原則として譲渡所得に対する税金は生じないことになります。
たとえば、取得費が分からない実家を4,000万円で売却し、譲渡費用が150万円かかったケースを考えてみましょう。
概算取得費は200万円となり、譲渡所得は3,650万円です。控除を使わなければ税額はおよそ741万円ですが、3,000万円を控除すると課税対象は650万円まで下がり、税額はおよそ132万円になります。
同じ売却であっても、特例を使えるかどうかで600万円以上の差が生まれる計算です。

| 項目 | 控除を使わない場合 | 3,000万円控除を使う場合 |
|---|---|---|
| 売却代金 | 4,000万円 | 4,000万円 |
| 概算取得費(5%) | 200万円 | 200万円 |
| 譲渡費用 | 150万円 | 150万円 |
| 特別控除 | 0円 | 3,000万円 |
| 課税譲渡所得 | 3,650万円 | 650万円 |
| 税額の目安(20.315%) | 約741万円 | 約132万円 |
※上記は長期譲渡所得の税率で計算した概算です。実際の税額は取得費の資料や個別事情によって変わります。
税率の区分と、相続不動産ならではの注意点
さらに、相続空き家の売却による譲渡所得には、所有期間に応じた税率の違いも関係してきます。
不動産を売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%の税率が適用されます。
5年以下の場合は短期譲渡所得となり、所得税30.63%と住民税9%を合わせた39.63%と、およそ2倍の高い税率で課税されます。
ここで押さえておきたいのは、相続で取得した不動産は被相続人が取得した日と取得費を引き継ぐという点です。
親が何十年も前に建てた実家であれば、相続してすぐに売っても長期譲渡所得として扱われるのが一般的で、短期の高い税率が適用される心配はほとんどありません。
一方で、自宅を10年超所有した場合の軽減税率(税率10%)は、自分が住んでいた居住用財産が対象ですので、空き家特例を使う相続空き家には適用されない点に注意してください。
他の特例との関係を整理する
相続空き家の3,000万円特別控除は、他の特例との組み合わせにルールがあり、ここを誤解すると節税額が想定より小さくなることがあります。
まず、相続財産を売却したときに相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」とは、同じ不動産について選択適用となり、併用はできません。
納めた相続税のうち、その不動産に対応する加算額が3,000万円を超えるようなケースでは、取得費加算を選んだほうが有利になる場合もあります。
次に、自分が住んでいたマイホームを売った場合の3,000万円特別控除とは、同じ年に両方の要件を満たすときでも、二つ合わせて3,000万円が控除の限度額となります。
一方で、マイホームの3,000万円控除とは異なり、空き家特例を使っても住宅ローン控除の適用が制限されない点は、買い替えを予定している方にとって大きなメリットです。
どの特例を使うのが有利かは、譲渡所得の金額、納めた相続税額、売却の経緯によって異なるため、事前に複数のパターンで試算しながら検討することが大切です。
| 項目 | 内容 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 譲渡所得の計算 | 売却代金から取得費・譲渡費用を控除 | 取得費資料の有無を確認 |
| 概算取得費 | 売却代金の5%を取得費とみなす | 実額と有利な方を比較 |
| 特別控除の利用 | 譲渡所得から最大3,000万円控除 | 要件をすべて満たしているか |
| 税率区分 | 5年超は長期20.315%/5年以下は短期39.63% | 相続は被相続人の取得日を引き継ぐ |
| 取得費加算の特例 | 空き家特例とは選択適用 | 相続税の負担が大きい場合は要比較 |
| マイホーム3,000万円控除 | 同一年の併用は合計3,000万円が限度 | 同じ年に自宅も売る予定がないか |
売り方は3通り/どの方法が有利かを比較する
空き家特例を使って相続空き家を売却する場合、売り方は大きく3つに分かれます。
ひとつ目は、現行の耐震基準に適合していることを確認したうえで、家屋付きのまま売却する方法です。
ふたつ目は、耐震改修工事を行って基準に適合させてから売却する方法で、建物を活かしたい場合に選択されます。
みっつ目は、建物を取り壊して更地にし、土地として売却する方法で、老朽化が進んだ実家では最も一般的な選択肢です。
これに加えて、令和6年1月1日以後の譲渡からは、売買契約に基づいて買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う形も認められるようになりました。
どの方法を選ぶかによって、かかる費用や工事期間、売却価格の見込みが大きく変わります。
解体費用は木造住宅で100万円から200万円程度が目安とされますが、道路付けや隣地との距離、残置物の量によって金額は上下します。
また、建物を取り壊すと、その土地は住宅用地の特例から外れ、翌年度の固定資産税が上がる点にも注意が必要です。
一方、古家付きのまま売る場合は解体費用を負担せずに済みますが、買主が工事を行う取決めを売買契約書に明記し、期限内に完了させる段取りが欠かせません。
したがって、解体費用や耐震改修費用の見積もりと、売却価格の想定を比較しながら、特例の適用期限との兼ね合いで最適な方法を検討することが重要です。
| 売り方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 家屋付きで売却 | 建物が現行の耐震基準に適合している | 耐震基準適合証明書等の取得が必要 |
| 耐震改修して売却 | 建物を活かして売却したい | 工事費用と工期、費用対効果を検討 |
| 解体して土地で売却 | 老朽化が進み建物に価値がない | 解体費用の負担と固定資産税の増加 |
| 買主が工事(令和6年〜) | 解体費用を先に出したくない | 翌年2月15日までの工事完了が条件 |
3000万円控除で損しないための実務手順と必要書類
まずは市区町村の確認書を取得する
相続空き家の3,000万円特別控除を受けるには、まず家屋の所在する市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要があります。
この確認書は、相続した家屋が特例の対象となる空き家であるかどうかを市区町村が確認したうえで発行するものです。
申請時には、被相続人の除票住民票や相続人の戸籍の附票、売買契約書の写し、電気・水道の使用中止日が分かる書類、家屋の状況が分かる写真などの提出を求められるのが一般的です。
交付までに要する期間は自治体によって異なり、数週間程度かかることもあるため、確定申告の直前に慌てて動くのは避けたいところです。
その後、譲渡した年分の確定申告で、譲渡所得の内訳書や売買契約書とともに確認書を添付して特例の適用を受けます。
事前準備に時間がかかることもあるため、売却を決めた段階から早めに書類の収集と申請に動くことが大切です。
確定申告で必要になる書類
空き家特例は、要件を満たしていても確定申告をしなければ適用を受けられません。
売却した年の翌年2月16日から3月15日までの申告期間に、必要書類をそろえて申告することになります。
相続人が複数いる場合は、それぞれが自分の持分について申告する必要があり、代表者がまとめて手続きすることはできません。
なお、控除の結果として納税額が0円になる場合でも、申告そのものは必要です。
「税金がかからないから申告しなくてよい」と考えてしまうと、特例が受けられず本来不要だった税金を納めることになりかねません。
| 書類 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の内訳書 | 税務署・国税庁サイト | 売却代金や取得費を記載 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 家屋所在地の市区町村 | 発行までの期間に余裕を持つ |
| 登記事項証明書等 | 法務局 | 建築時期・区分所有でないことを確認 |
| 売買契約書の写し | 仲介会社等 | 譲渡対価1億円以下の確認 |
| 耐震基準適合証明書等 | 建築士事務所・評価機関 | 家屋付きで売却する場合に必要 |
期限から逆算してスケジュールを組む
さらに、相続人が複数いる場合は、売却方針や時期について早い段階で意見を調整しておく必要があります。
国税庁は、空き家特例の適用期間について「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に行う譲渡に限られると定めています。
不動産の売却活動には、査定から成約まで数か月、引渡しまでを含めるとさらに時間がかかることが一般的です。
そこに遺産分割協議、相続登記、確認書の取得、解体や耐震改修の工期が加わると、3年という期間は決して長くありません。
この期限に間に合うよう、相続登記、確認書の取得、売却活動、決済日程を逆算しながら進めなければなりません。
そのため、税務に詳しい専門家や不動産の実務に精通した専門家へ早めに相談し、節税とスムーズな売却の両立を図ることが望ましいです。
| 手順 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 事前準備 | 登記事項や相続関係の整理 | 相続人全員の合意形成 |
| 2. 相続登記 | 名義を相続人へ変更 | 令和6年4月から申請が義務化 |
| 3. 売却活動 | 査定・媒介契約・売買契約 | 解体や耐震改修の方針を決定 |
| 4. 確認書取得 | 市区町村へ申請・書類提出 | 発行までの期間を要確認 |
| 5. 引渡し・申告 | 決済と翌年の確定申告 | 特例期限と必要書類の管理 |
空き家特例でよくある失敗と注意点
空き家特例は節税効果が大きい制度ですが、その分だけ要件も細かく、あと一歩のところで適用できなくなる事例が実際に起きています。
特に多いのが、良かれと思って行った行動が、結果的に要件から外れる原因になってしまうケースです。
ここでは、相続した実家の売却でつまずきやすいポイントを整理しておきます。
こんなケースは適用できない可能性があります
- 空いているのはもったいないからと、相続後に賃貸へ出した、または駐車場として貸した
- 相続人の一人が一時的に住んだ、あるいは荷物置き場として事業に使った
- 売却を検討しているうちに、相続開始から3年目の年末を過ぎてしまった
- 建物と土地の合計譲渡対価が1億円を超えた(過去の一部売却分も合算して判定)
- 親族や自分が経営する同族会社など、特別の関係にある相手に売却した
- 対象が分譲マンション(区分所有建物)だった
- 確定申告をしなかった、または確認書の添付を忘れた
あわせて、空き家をそのまま持ち続けることのコストも把握しておきましょう。
令和6年4月1日からは相続登記の申請が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければ、正当な理由がない限り過料の対象となります。
また、管理が行き届かない空き家は「管理不全空家」として市区町村から勧告を受ける可能性があり、勧告を受けると住宅用地に対する固定資産税の軽減措置が外れ、税負担が大きく増えることがあります。
草木の繁茂、外壁の落下、不法投棄といったトラブルは近隣関係にも影響しますので、売却の判断は早いほど選択肢が広く残ります。
「まだ決められない」という段階でも、査定と適用可否の確認だけ先に済ませておくと、期限が迫ったときに慌てずに済みます。
相続空き家の売却に関するよくあるご質問
相続した空き家なら誰でも3000万円控除を使えますか。
使えるとは限りません。被相続人が相続開始の直前に一人で住んでいた昭和56年5月31日以前建築の一戸建てであること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること、譲渡対価が1億円以下であることなど、複数の要件をすべて満たす必要があります。
分譲マンションを相続した場合はどうなりますか。
区分所有建物として登記されている建物は空き家特例の対象外です。ただし、相続税の取得費加算の特例など、別の制度を検討できる場合がありますので、個別に確認することをおすすめします。
売却前に少しの間だけ賃貸に出すのは問題ありますか。
相続の時から譲渡の時まで、事業用・貸付用・居住用に使っていないことが要件です。短期間の賃貸や駐車場としての利用でも適用できなくなる可能性が高いため、売却を予定しているなら空き家のまま維持するのが安全です。
解体してから売るのと、古家付きのまま売るのはどちらが有利ですか。
一概には決まりません。令和6年1月1日以後の譲渡からは、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象になったため、古家付きで売る選択肢が取りやすくなりました。解体費用、売却価格の見込み、期限までのスケジュールを比べて判断します。
相続人が3人います。控除は使えますか。
使えます。ただし家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合、控除額の上限は1人あたり2,000万円になります。3人であれば合計6,000万円の控除枠となり、それぞれが自分の持分について確定申告を行います。
控除で税金が0円になる場合も確定申告は必要ですか。
必要です。空き家特例は確定申告をして初めて適用される制度で、被相続人居住用家屋等確認書などの添付も求められます。申告を怠ると特例を受けられません。
被相続人が老人ホームで亡くなった場合も対象になりますか。
平成31年4月1日以後の譲渡については、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象になります。入所後もその家屋を引き続き使用しており、他人に貸したり住まわせたりしていないことなどが条件です。
まとめ
相続した空き家の3,000万円特別控除は、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける強力な節税制度です。
一方で、建物の築年数や被相続人の居住実績、売却期限、相続人の人数など細かい要件を外すと適用が受けられません。
また、譲渡所得の計算方法や取得費加算などの他の特例との関係を誤解すると、思ったほど節税できないケースもあります。
判断のポイントは、①対象になる不動産か、②期限までに引渡しまで終えられるか、③どの売り方が費用対効果に優れるか、④どの特例を選ぶのが有利か、の4点です。
このうちひとつでも判断がつかない項目があれば、早い段階で専門家に確認しておくと、あとから取り返しがつかない事態を防げます。
当社では、相続空き家の売却と3,000万円控除の適用可否の整理、市区町村への確認書申請のサポート、税理士など専門家との連携まで丁寧にお手伝いします。
査定のみ、相談のみのご利用でも問題ありません。「自分の場合はいくら節税できるのか」を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
本記事は、相続した空き家の売却に関する一般的な情報をまとめたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。税制は改正されることがあり、適用の可否は個々の状況によって異なります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。



