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現状引き渡しの擁壁あり土地は要注意?解体や擁壁費用リスクその他法律を解説

紺屋嶋 宗一郎

筆者 紺屋嶋 宗一郎

不動産キャリア18年

大阪で19年不動産業に従事しております。大事なご資産である不動産を、最適な活用方法をご提案させて頂きます。行政・宅建協会の不動産相談員も兼務させて頂いておりますので、ご契約の有無に関わらず、ご安心、ご納得いただける事をお約束します。

擁壁あり土地を「現状引き渡し」で買う前に知っておきたいこと|解体費用・リスク・法律を徹底解説
住宅用地購入ガイド

擁壁あり土地を「現状引き渡し」で購入前に
知っておきたいこと


解体・やり替え費用の相場|不適格擁壁のリスク|建築基準法・がけ条例の注意点|購入前チェックリスト

#擁壁費用 #現状引き渡し #不適格擁壁 #住宅用地 #がけ条例 #建築基準法
住宅用地を探していると、同じ広さや価格帯でも「擁壁あり・現状引き渡し」と記載された土地が目に留まることがあります。一見するとお得に感じるものの、擁壁の老朽化・不適格擁壁によるリスク、そして将来の擁壁費用が大きな負担となるケースは少なくありません。

建築基準法・宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)・がけ条例など複数の法律が絡む擁壁問題を知らないまま購入すると、思い描いた住宅計画が実現できなくなる可能性もあります。

本記事では、擁壁付き土地の「現状引き渡し」を検討中のご家族に向けて、解体・やり替え費用の考え方・相場、見落としがちなリスク、購入前に必ず確認したいポイントまで、専門的な視点からわかりやすく解説します。
目次
  1. 擁壁あり土地を「現状引き渡し」で買う前に
    • 擁壁とは何か?種類と基本的な役割
    • 現状引き渡しの意味と買主が負うリスク
    • 見落とされやすい不適格擁壁の危険性
  2. 擁壁解体・やり替えにかかる費用と相場感
    • 解体費用の構成と相場
    • 新設擁壁工事費の目安
    • 資金計画への組み込み方
  3. 住宅用地購入前に確認したい擁壁リスクと法律・条例
    • 建築基準法・盛土規制法とは
    • がけ条例で建物配置はどう変わるか
    • 既存不適格擁壁の問題点
    • ハザードマップ・公的資料の活用
  4. 現状引き渡しの擁壁付き土地を安心して選ぶために
    • 購入前の目視チェックポイント
    • 補修・解体・再構築の選択肢比較
    • 維持管理費・売却時の資産価値への影響
  5. よくある質問(FAQ)
  6. まとめ

擁壁あり土地を「現状引き渡し」で買う前に

擁壁とは何か?種類と基本的な役割

擁壁(ようへき)とは、宅地と道路・隣地との間に生じる高低差(のり面)で、土が崩れないように支えるための構造物のことです。日本の丘陵地・傾斜地に多く分布する住宅団地では、ほぼすべての区画になんらかの擁壁が設置されています。国土交通省は「宅地擁壁が老朽化した場合、地震や大雨の際に倒壊し、宅地や周辺に甚大な被害を及ぼすおそれがある」として、所有者による定期的な点検と維持管理を強く求めています。

擁壁には材料や構造によって多くの種類があります。それぞれ安全性・耐用年数・工事費が大きく異なるため、購入前に「どの種類の擁壁か」を把握することが最初の重要ステップです。

鉄筋コンクリート造
最も一般的な現代工法。耐久性・安全性が高く、確認申請が必要。
コンクリートブロック積
昔から多用されたが、古い製品は不適格擁壁とみなされる例が多い。
⛰️
空石積み・練石積み
伝統的な石積み工法。空石積みは技術基準不適合の代表例。
重力式擁壁
無筋コンクリート。高さが限られる場合に採用されることがある。
逆T型・L型擁壁
鉄筋コンクリート造の一種。断面形状で種別が分かれる。
二段擁壁・増積み
後から継ぎ足した二段構造。不適格擁壁とされるリスクが高い。

なかでも空石積み・増積み・二段擁壁は「技術基準に適合しない不適格擁壁」と整理されており、国土交通省も「地震時などに倒壊被害が出るおそれが高い」と明確に警告しています。住宅用地の検討段階で擁壁の種類を確認しないまま購入するのは、大きなリスクを抱えることになります。

「現状引き渡し」の意味と買主が負うリスク

土地情報に「擁壁あり・現状引き渡し」と記載されている場合、これは「擁壁や敷地の状態をそのまま引き継ぐ契約条件」を意味します。売買契約締結後に擁壁の老朽化・不具合・法令不適合が判明しても、原則として買主の費用負担でその対応をしなければならないのが一般的な取引慣行です。

⚠ 「現状引き渡し」で注意すべき3つのポイント
  • 引き渡し後に擁壁の補修・やり替えが必要と判明しても、費用は原則として買主の全額負担となる
  • 建築基準法では高さ2mを超える擁壁に確認申請が必要。既存擁壁の確認済証がない場合、建築計画に制限が生じる可能性がある
  • 購入後に「不適格擁壁だった」と判明すると、大規模な補強・やり替え工事が義務付けられることがある

仲介業者から「擁壁は問題ない」と口頭で説明を受けても、書面で保証されていなければ法的な保護は限定的です。必ず専門家による調査と、擁壁の法令適合性の書面確認を行ってから、売買契約を締結することが重要です。

また、建築基準法では高さが一定以上の擁壁に対して構造や排水などの技術基準が定められており、既存擁壁についても安全性・法令適合性を確認しておくことが欠かせません。価格の安さだけを理由に購入を急ぐと、後から多額の擁壁費用や工期の遅れが発生するリスクがあります。

見落とされやすい不適格擁壁の危険性

住宅用地を検討するご家族が、擁壁の老朽化や不適格擁壁のリスクを見落としてしまうケースは後を絶ちません。国土交通省は、ひび割れ・傾き・排水不良などの変状がある擁壁は、倒壊の危険度が高まる可能性があるとして、チェックシートによる点検を呼びかけています。

不適格擁壁が存在する場合、次のような問題が連鎖的に発生することがあります。

1
建物計画への制約

不適格擁壁のそばには、建物を建てる位置・高さ・規模に制限がかかる場合があり、希望の間取りや駐車スペースが確保できないことがある。

2
大規模な補強・やり替え工事の発生

建て替えや増改築のタイミングで、自治体や建築確認機関から擁壁の補強・再構築を求められ、数百万円規模の工事費が突然発生することがある。

3
住宅ローン審査への影響

金融機関によっては、不適格擁壁が存在する土地や建物を担保評価の対象外とする場合がある。希望する住宅ローンが利用できなくなるリスクがある。

4
地震・大雨時の倒壊リスク

特に空石積みや二段擁壁は、強い地震や集中豪雨で崩壊しやすく、隣地や道路への被害が生じた場合、所有者に賠償責任が問われる可能性がある。

確認ポイント 主なチェック内容 見落とし時の懸念
擁壁の種類 材料・構造・高さ・年代 不適格擁壁の見逃し・倒壊リスク増大
擁壁の状態 ひび割れ・傾き・膨らみ・排水詰まり 大雨・地震時の崩壊・賠償責任
法令適合性 確認申請の有無・技術基準適合 建築計画への制限・ローン審査への影響
二段擁壁・増積みの有無 後からの継ぎ足し・複数段構造 不適格認定による再構築義務化

擁壁解体・やり替えにかかる費用と相場感

擁壁解体費用の構成と相場

擁壁の解体費用は「面積(㎡)」や「体積(㎥)」に応じた単価を基本とし、そこに重機使用料・残土処分費・コンクリート・鉄筋の産業廃棄物処理費が加算される構成です。費用に影響する主な要因は次の通りです。

  • 擁壁の材質:鉄筋コンクリート造は切断・鉄筋分別作業が必要で、石積みよりコストが高くなる傾向がある
  • 擁壁の高さ・延長:高くなるほど体積が増え、重機の種類や足場が変わり費用が上がる
  • 搬入・搬出経路:道路幅員が狭い、重機が入れない場合は手作業が増え割高になる
  • 隣地・埋設管との距離:隣地ぎりぎりや埋設管が近い場合、慎重な施工が必要で工期・費用が増加する
  • 残土・廃材の量:コンクリートガラや鉄筋は産業廃棄物として処分するため、体積が多いほど処分費がかさむ

これらの条件が重なると、単純な「高さ×長さ」の計算では実際の費用を大きく下回ることがあります。必ず現地調査を行い、複数の施工業者から見積もりを取ることが重要です。

擁壁解体費(RC造)
鉄筋コンクリート造
擁壁の解体
条件次第で大幅変動
切断・鉄筋分別・産廃処分費が大きな割合を占める。搬出路が狭い場合はさらに増額。
擁壁解体費(ブロック積)
コンクリートブロック
積擁壁の解体
RC造より安価な傾向
ブロックの撤去・処分が主体。ただし年代が古い場合はアスベスト含有調査が必要なケースも。
新設擁壁工事費
RC造擁壁の
新規構築
解体費を大きく上回る
設計費・型枠・鉄筋・コンクリート打設・養生・確認申請費などが加算される。
付帯・予備費
地盤補強・
仮設工事など
総額の10〜20%程度
地盤調査結果によって地盤改良が必要になる場合や、仮囲い・水替え工事が発生する場合がある。
費用見積もりのポイント
擁壁解体・新設の概算費用は、現地の状況・搬入経路・隣地条件によって同じ規模でも大きく変わります。購入前に専門業者(建築士・解体業者・ハウスメーカーの担当者)に現地確認を依頼し、複数社から見積もりを取ることを強くお勧めします。ネット上の「坪単価」や「㎡単価」はあくまで参考値に過ぎません。

新設擁壁工事費の目安

既存擁壁を撤去して新たに鉄筋コンクリート造の擁壁を構築する場合、設計費・地盤補強費・型枠工事・コンクリート打設・養生・確認申請費用が積み上がります。擁壁の高さが増すほど構造計算の複雑さが増し、コストが指数関数的に上昇する傾向があります。

特に高さ2mを超える擁壁は建築基準法上の確認申請が必要となるため、建築士や設計事務所への依頼費用も見込んでおく必要があります。また、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の規制区域内では、自治体への許可申請や事前協議が必要となる場合もあります。

費用項目 主な内容 資金計画上の位置付け
擁壁解体費 重機・人件費・鉄筋分別・産廃処分 土地購入時の追加工事費(造成費)
設計費・申請費 構造計算・図面作成・確認申請手数料 建物本体とは別の設計費として計上
新設擁壁本体工事費 型枠・鉄筋・コンクリート・養生 造成費の中核。解体費の数倍になるケースも
地盤補強費 地盤調査・杭打ち・表層改良など 調査結果次第で大幅に増額する要注意項目
付帯・予備費 仮設工事・水替え・想定外への対応費 総予算の10〜20%をバッファとして確保

資金計画への組み込み方

住宅用地を購入する際は、建物本体の工事費と擁壁費用を切り離して考えてしまいがちですが、これが落とし穴です。特に「現状引き渡し」で擁壁付き土地を購入する場合、売買契約締結後に不具合が判明すると、想定外の工事費が発生し住宅ローンや自己資金計画に深刻な影響をもたらすことがあります。

資金計画で想定しておくべき3つのシナリオ
  • シナリオA(現状維持):既存擁壁をそのまま使用できる場合。点検・軽微な補修費のみ計上。
  • シナリオB(一部補修):ひび割れ補修・排水改善など部分的な工事が必要な場合。見積もりを取って計上。
  • シナリオC(全面やり替え):不適格擁壁・重大な損傷がある場合。解体+新設の最悪ケース費用を計上。
シナリオCの費用を総予算に組み込んでおけば、どんな状況になっても対応できる安心感が生まれます。

住宅ローン借入額・自己資金・建物工事費・擁壁費用・諸費用のすべてを一体で計画することで、購入後の資金不足リスクを大幅に下げることができます。あらかじめ複数の費用パターンを想定しておくと、住宅用地選びや間取り計画の優先順位付けもしやすくなります。


住宅用地購入前に確認したい擁壁リスクと法律・条例

建築基準法・盛土規制法とは

高低差のある住宅用地の擁壁には、複数の法律が関わっています。主要なものを整理すると次の通りです。

法律・制度 擁壁に関する主な規定 購入前の着眼点
建築基準法 高さ2m超の擁壁に確認申請・構造基準が必要。排水設備の設置義務あり。 確認済証・検査済証の有無を確認
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法) 造成工事の許可・安全な擁壁設置基準・定期報告義務など 規制区域内か否か・許可図書の保存状況
がけに関する条例(各自治体) がけ付近での建築位置・規模の制限。がけ高×一定倍率のセットバックが必要な場合も 建物配置・階数・延床面積への影響
土砂災害防止法 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定。特別警戒区域では開発規制が強化 ハザードマップでの区域確認

これらの法律は宅地の安全性を確保するための最低限の基準という位置付けです。建築基準法に基づく確認申請が必要な擁壁について、確認済証が取得されているかどうかは、購入前に必ず確認しなければならない重要ポイントです。確認済証がない擁壁は、建物の建築確認申請時に問題となる可能性があります。

がけ条例で建物配置はどう変わるか

多くの自治体では、がけ付近での建築を制限する独自の「がけに関する条例」を設けています。一般的には、「がけの高さの2倍以上の距離を建物から離す」といったセットバック規制が設けられており、土地の形状や擁壁の高さによっては、建築可能な有効面積が大幅に減少することがあります。

⚠ がけ条例が適用された場合の具体的な影響例
  • 希望の間取りが実現できず、建物を小さくせざるを得ない
  • 駐車スペースが確保できなくなる
  • 2階建てが許可されず、平屋または一部1階建てになる場合がある
  • 増改築のタイミングで新たながけ条例の規制が適用される

がけ条例の内容は自治体ごとに異なります。購入を検討している土地がある自治体の建築指導課や開発指導課に事前に確認し、建物が建てられる範囲(建築可能エリア)を明確にしてから判断することが欠かせません。

既存不適格擁壁の問題点

現に存在する擁壁の中には、建設当時の基準では適合していたものの、現在の法令から見ると安全性が不十分と評価される「既存不適格擁壁」があります。昭和時代に造成された住宅団地では、このような既存不適格擁壁が多数存在するとされています。

既存不適格擁壁の主な問題点は以下の通りです。

  • 建て替え・増改築時に補強・造り替えを求められる:行政または建築確認機関から是正指導が入り、想定外の工事費・工期が発生する
  • 住宅ローン担保評価への影響:金融機関が不適格擁壁を問題視し、融資額が減額または否決されるケースがある
  • 売却時の価格下落:将来の買主も同じリスクを負うため、売却時に価格交渉で大幅に値引きを求められることがある
  • 地震・豪雨時の倒壊リスク:既存不適格擁壁は現行基準の擁壁より耐力が劣り、大規模災害時の崩壊リスクが高い

ハザードマップ・公的資料の活用

こうした擁壁リスクを把握するには、公的機関が提供している各種資料の活用が非常に有効です。購入前に確認しておくべき公的情報を整理します。

国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」

ひび割れ・傾き・ふくらみ・排水状態などを目視で確認する際の参考資料として公開されています。素人でも確認しやすい項目が整理されており、現地視察時に持参すると便利です。

各自治体のハザードマップ

洪水・土砂災害・がけ崩れなどの危険度を色分けした地図。インターネットで無料公開されており、購入検討地が「土砂災害警戒区域」や「特別警戒区域」に該当していないかを事前に確認できます。

法務局の公図・地積測量図

土地の境界・面積・形状を確認できます。擁壁の位置が隣地との境界と一致しているかどうかを確認する際に役立ちます。

役所の宅地造成履歴・開発許可図書

造成工事時の開発許可図面・擁壁の確認済証・検査済証が保存されているかを建築指導課や開発指導課に問い合わせます。書類が残っていれば、擁壁の位置・構造・設計強度を把握しやすくなります。

国土交通省「宅地擁壁の健全度評価・予防保全マニュアル」

専門的な擁壁点検の手法や健全度判定の考え方が整理されています。専門家に調査を依頼する際の指標として活用できます。

確認項目 内容の概要 購入前の着眼点
関係法令 建築基準法・盛土規制法・土砂災害防止法 擁壁規模と適用法令の把握
がけに関する条例 各自治体のがけ付近建築制限 建物配置・延床面積・階数の制約有無
公図・測量図 土地境界・面積・形状 擁壁と隣地境界の関係確認
開発許可図書 造成時の設計図・確認済証・検査済証 擁壁の構造・法令適合性の証明
ハザードマップ 土砂災害・洪水・がけ崩れ危険度情報 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の該当有無

現状引き渡しの擁壁付き土地を安心して選ぶために

購入前の目視チェックポイント

擁壁付き土地を内見する際は、必ず擁壁の状態を自身の目で確認することが重要です。国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」では、危険度の把握に役立つ確認項目が示されています。以下のポイントを参考に、現地でチェックしてみましょう。

チェック箇所 危険サイン リスクレベル
表面のひび割れ 幅0.5mm以上・深い・広範囲に広がっている
傾き・はらみ 擁壁全体または一部が道路側に傾いている
ふくらみ・変形 一部分が膨らんで出っ張っている
排水口の状態 水抜き穴が詰まっている・水が出ていない 中〜高
擁壁天端の状況 植木の根が侵入している・天端が欠損している
擁壁周辺の地面 擁壁の前後で地盤沈下・陥没の跡がある 中〜高
石積み・増積みの有無 上部に後から積み足された跡がある

目視チェックで不安な点が一つでもあれば、売買契約前に専門家(一級建築士・土木技術者・宅地防災工事技術者など)による詳細調査を依頼することを強くお勧めします。調査費用は数万円程度が一般的ですが、購入後に発覚した場合の損失と比べると非常に小さな費用です。

補修・解体・再構築の選択肢比較

擁壁への対処法は「現状維持」「補修」「解体・再構築」の大きく3種類があります。国土交通省の「宅地擁壁の復旧技術マニュアル」では、被災擁壁の復旧方針を「原形復旧」「補修」「再構築」に分けており、損傷の程度と周辺条件によって適切な方法が異なるとされています。

対処法 適用場面 費用イメージ 将来リスク
現状維持(点検のみ) 健全度が高く、法令適合している場合 年間の点検費のみ 低(定期点検で管理)
一部補修 ひび割れ・排水詰まりなど軽微な不具合 数十万円規模 中(根本原因の対処が必要)
解体・再構築 不適格擁壁・重大損傷・法令不適合 数百万〜数千万円規模 低(新設で安全性が確保される)

住宅ローン返済・教育費などのライフプランと並行して、擁壁にかかる初期費用と長期的な対策費を一体で考えることで、無理のない総予算の範囲で判断しやすくなります。「今は安いが、後から高くつく」という落とし穴を避けるためにも、最悪ケースの費用シナリオを事前に把握しておくことが大切です。

維持管理費・売却時の資産価値への影響

擁壁付き土地を購入した後も、擁壁の維持管理責任は所有者にあります。盛土規制法に基づく各自治体の案内では、定期的な点検と変状が見られた場合の専門家への相談が推奨されています。維持管理を怠ると、経年劣化が進み、大雨や地震のタイミングで崩壊するリスクが高まります。

✅ 購入後に実践したい維持管理の習慣
  • 年1回以上の目視点検(国交省チェックシートを活用)
  • 水抜き穴の詰まり確認(雨季前・雨季後)
  • 天端や植栽の管理(根の侵入防止)
  • 補修・工事の記録・写真・図面の保管
  • 5〜10年に一度の専門家による詳細点検

将来的に売却する場合、擁壁の健全性・法令適合性・点検・補修の履歴は購入検討者の判断材料となります。「適切に維持管理されてきた擁壁付き土地」と「放置されてきた擁壁付き土地」では、売却時の評価が大きく変わります。購入時から記録を残す習慣をつけておくことで、資産価値の維持・向上につながります。

確認・検討項目 主な内容 将来への影響
目視チェック ひび割れ・傾き・排水状態の定期確認 災害リスクの早期把握・倒壊防止
公的図面・資料の取得 公図・造成図・許可図面・確認済証 擁壁位置と法令適合の証明
費用シナリオの比較 補修・解体・再構築の費用試算 総予算・ライフプランへの影響最小化
維持管理と記録の保存 定期点検・補修履歴・写真記録 将来売却時の説明資料・資産価値の維持
専門家への相談 建築士・土木技術者・宅地防災工事技術者 客観的な安全評価・リスク把握

よくある質問(FAQ)

擁壁付きの土地は、擁壁のない土地より安くなるのですか?
必ずしも安くなるわけではありません。擁壁の状態が良好で法令適合している場合、価格への影響は小さいことがあります。一方、老朽化・不適格擁壁の場合は将来的な工事費を見込んで値引きが求められることがあります。いずれの場合も、擁壁の状態と将来費用を合算した「総コスト」で比較することが重要です。
売主から「擁壁は問題ない」と言われましたが、そのまま信じて大丈夫ですか?
口頭での説明だけでは不十分です。売主や仲介業者の「問題ない」は主観的な判断である場合があり、法的な保証ではありません。必ず専門家(建築士・土木技術者)による現地調査と、確認済証・検査済証などの書面確認を行ってから購入判断をしてください。
擁壁の確認申請書・確認済証が見当たりません。どうすれば確認できますか?
売主や不動産会社に書類の有無を確認するとともに、役所の建築指導課・開発指導課に問い合わせる方法があります。役所では宅地造成工事の許可図書・開発許可図面が保存されていることがあります。書類が見当たらない場合は、擁壁の適合性が不明確なままであることを認識した上で、専門家による現地調査を行うことをお勧めします。
がけ条例が適用されると、どの程度建物が建てにくくなりますか?
自治体によって異なりますが、「がけ高さの2倍の距離を建物から離す」ルールの場合、擁壁高が3mなら6m以上のセットバックが必要となります。その分、建築可能な面積が狭まり、希望の間取りや駐車スペースが確保できないケースもあります。購入前に自治体の担当窓口に具体的な数値を確認することが不可欠です。
擁壁付き土地の住宅ローン審査は、通常の土地と違いますか?
金融機関によって判断基準が異なります。不適格擁壁が存在する土地・建物は担保評価が下がる場合があり、融資額の減額または否決となることがあります。購入前に利用予定の金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談し、擁壁の状態が審査に影響しないかを事前に確認することをお勧めします。
擁壁のやり替え工事中は、住宅の建築工事と並行して進められますか?
擁壁工事は原則として建物本体の基礎工事より先に行う必要があります。工事順序・工期・仮設工事の計画は施工業者と事前に綿密に確認が必要です。擁壁工事が予想以上に長引くと、建物の着工・竣工・引き渡しがすべて遅れる原因となるため、スケジュールに十分な余裕を設けることが重要です。

まとめ

擁壁ありの土地を現状引き渡しで購入する場合、見た目だけで判断すると後から多額の擁壁費用・工期の遅れ・建築制限といった深刻な問題に直面するリスクがあります。購入前にしっかり確認し、資金計画に擁壁費用を組み込むことが、安心してマイホームを実現するための大前提です。

購入前に押さえておきたい重要ポイント まとめ

  • 擁壁の種類・材質・高さを確認し、不適格擁壁(空石積み・二段擁壁・増積み)でないかをチェックする
  • 「現状引き渡し」は引き渡し後の補修・やり替え費用が原則買主負担と理解した上で購入判断をする
  • 建築基準法の確認済証・がけ条例の適用有無・盛土規制法の規制区域かどうかを購入前に確認する
  • 建物本体の工事費とは別に、擁壁解体・新設費用を最悪ケースで見積もり、資金計画に組み込む
  • 国交省チェックシート・ハザードマップ・法務局資料・役所の開発許可図書を活用してリスクを把握する
  • 購入後も定期的な点検・補修履歴の記録を残し、将来の売却時の資産価値維持につなげる
  • 不安な点があれば専門家(一級建築士・土木技術者)に現地調査を依頼し、客観的な評価を得る

擁壁付きの住宅用地はリスクがある反面、価格面でメリットが生まれるケースもあります。重要なのはリスクを正しく把握した上で、総コストと安全性を判断することです。当社では現地確認・公的資料のチェック・将来の維持管理や売却まで見据えたアドバイスを行っています。擁壁付きの住宅用地について少しでも不安や疑問があれば、お気軽にご相談ください。

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