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農地の相続後売却は可能か?農地転用の手法と高価売却のリスクも解説

紺屋嶋 宗一郎

筆者 紺屋嶋 宗一郎

不動産キャリア18年

大阪で19年不動産業に従事しております。大事なご資産である不動産を、最適な活用方法をご提案させて頂きます。行政・宅建協会の不動産相談員も兼務させて頂いておりますので、ご契約の有無に関わらず、ご安心、ご納得いただける事をお約束します。

農地相続の完全ガイド|農地転用・売却・税金まで徹底解説
農地相続 完全ガイド 2026年版

農地を相続したら何をすべきか
転用・売却・税金まで徹底解説

親から受け継いだ農地の扱い方に悩んでいませんか?農地相続には農地法・相続登記・農地転用許可など複雑なルールが絡みます。基礎知識から高価売却・節税の判断軸まで、順を追って解説します。


#農地相続 #農地転用 #農地売却 #相続後売却 #高価売却 #農地法 #相続税納税猶予 #譲渡所得税

親から受け継いだ農地を前に、どう扱うべきか悩んでいませんか。農地相続は、相続した土地が農地か宅地かによってルールが大きく異なり、相続後売却農地転用の手法を間違えると、思わぬリスクや余計な負担を抱えてしまうことがあります。しかし、基本的な仕組みと流れを理解しておけば、農地の保有・活用・高価売却の可能性を比較しながら、納得できる判断がしやすくなります。このページでは、農地の相続に関する基礎知識から、農地売却の進め方、農地転用のポイント、さらには税金や費用面の注意点まで、順を追ってわかりやすく整理していきます。

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農地を相続したら最初に確認すべき基礎知識

農地相続で最初に迷うのは「何から始めれば良いか」という点です。手続きの種類が多く、農地法・相続登記・農業委員会への届出など複数の制度が絡むため、全体像を把握せずに動くと手戻りが発生します。まず基礎知識を整理し、落ち着いて一歩一歩進めていきましょう。

農地と宅地の違い・農地法の基本

まず、相続した土地が農地か宅地かを正確に把握することが大切です。農地とは、耕作や養畜の目的で利用されている土地を指し、農地である限り農地法の規制を受けます。農地法は「農地は農業のために守る」という観点から、農地の売買・転用・賃貸借に対して厳格なルールを設けている法律です。

一方、宅地は住宅や店舗などの建物の敷地として利用される土地であり、都市計画法や建築基準法など、別の法令のルールが中心となります。このように、同じ「土地」でも区分によって許可が必要な行為や取引の制限が大きく異なるため、登記事項証明書の地目欄や利用状況を確認し、現在の属性を整理しておくことが重要です。

農地かどうかを確認する方法
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)の「地目」欄を確認する(田・畑=農地)
  • 地目が「宅地」でも現況が農地として使われていれば農地法が適用されるケースがある
  • 固定資産税の課税通知書(農地・市街化区域農地などの区分が記載されている)
  • 市区町村の農業委員会に問い合わせて農地台帳を確認する
  • 航空写真や現地確認で耕作されているかを把握する

登記上の「地目」と実際の利用状況(現況)が一致していない場合もあります。農地法上の農地かどうかは「現況主義」で判断されることが多いため、現地確認と農業委員会への照会が重要です。

区分対象となる土地主な規制法令売買・転用の自由度
農地(田・畑)耕作・養畜目的の土地農地法・農業振興地域整備法低(許可・届出が必要)
宅地建物の敷地都市計画法・建築基準法高(原則自由に売買可)
山林・原野山地・林地など森林法など中(一部規制あり)
雑種地駐車場・資材置場など都市計画法など中〜高

相続発生後の時系列フロー

農地相続が発生したとき、何をどの順番でやるべきか、時系列で把握しておくことで手続きの漏れを防げます。

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相続開始の確認・戸籍収集

被相続人の戸籍謄本を収集し、法定相続人を特定します。遺言書の有無も必ず確認しましょう。

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農地を含む財産の把握・評価

農地の所在地・地番・地積・地目を登記事項証明書で確認。農地の相続税評価額を把握します。

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遺産分割協議・遺産分割協議書の作成

相続人全員の合意のもと、農地を含む遺産の分け方を決定します。農地の将来の活用方針も含めて話し合いましょう。

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相続登記の申請(義務)

令和6年4月から相続登記が義務化。相続開始を知った日から3年以内に法務局へ申請が必要です。

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農業委員会への届出(義務)

農地法第3条の3に基づき、農地の所在地を管轄する農業委員会への届出が義務付けられています。

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相続税の申告・納税(必要な場合)

基礎控除を超える場合は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に申告・納税。相続税の納税猶予制度の活用も検討しましょう。

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農地の今後の活用方針を決定・実行

保有継続/農地中間管理機構への貸出し/農地転用して売却など、具体的な方向性を決定し実行します。

相続登記の義務化と農業委員会届出

令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。農地を含む不動産については、相続開始を知った日から3年以内の申請が必要とされています。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料(行政罰)の対象となる可能性があります。

また、農地相続などにより農地を取得した場合には、農地法第3条の3に基づき、その農地の所在地を管轄する農業委員会への届出が法律上義務付けられています。この届出は、農地の権利取得を農業委員会が把握し、農地の適切な管理・利用を促進するためのものです。

⚠ 義務化された手続きを忘れずに
  • 相続登記:相続開始を知った日から3年以内(違反で最大10万円の過料)
  • 農業委員会届出:農地法第3条の3に基づく届出(義務)
  • 複数の農地がある場合は、それぞれの所在地の農業委員会に届出が必要
  • 相続登記は司法書士、農業委員会届出は行政書士に依頼すると安心

農地の今後の方向性を整理する

基礎的な手続を踏まえたうえで、相続した農地を今後どのように扱うかを大まかに検討することが重要です。方向性は主に3つに分かれます。

保有・農業継続
  • メリット: 将来の活用余地確保
  • メリット: 納税猶予制度の活用可能性
  • 注意: 固定資産税・管理費が毎年発生
  • 注意: 耕作放棄すると行政指導のリスク
貸し出し・活用
  • メリット: 賃料収入を得ながら農地を維持
  • メリット: 農地中間管理機構を利用すれば管理が楽
  • 注意: 貸借にも農業委員会の許可等が必要
  • 注意: 将来の転用が制限される場合あり
転用・売却
  • メリット: 早期の資金化・管理負担の解消
  • メリット: 農地転用で高価売却の可能性
  • 注意: 転用許可の取得に時間がかかる
  • 注意: 譲渡所得税・住民税が発生
確認項目主な内容見落とし時のリスク
地目と利用状況農地か宅地かの属性・現況誤った前提で売却検討・手続き遅延
相続登記義務相続開始から3年以内申請(令和6年4月〜義務化)過料対象・売却時にトラブル発生
農業委員会届出農地法3条の3に基づく届出(義務)手続不備・行政指導のリスク
相続税申告期限相続開始を知った翌日から10ヶ月以内延滞税・加算税が発生
今後の方向性保有か活用か相続後売却か不要な税負担・維持費・機会損失

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農地相続後に売却する際の手法と高価売却のポイント

農地相続後に売却を検討する場合、「農地のまま売る」のか「農地転用して売る」のかによって、手続き・期間・価格が大きく異なります。それぞれの手法の特徴を正しく理解し、自分の農地の条件に合った高価売却の戦略を立てることが重要です。

農地のまま売却する場合(農地法3条)

相続した農地を農地のまま売却する場合は、まず農地法上の「農地」に該当するかどうかを確認し、登記簿上の地目と現況をそろえることが重要です。耕作目的で売買する場合には農地法3条に基づき、原則として農業委員会等の許可を受ける必要があります。買主側にも、一定面積以上を効率的に耕作できるかなどの許可要件があるため、実際に購入できるのは農業従事者等に限られやすい状況です。このような理由から、相続した農地を農地のまま売却しようとしても買い手が見つかりにくく、売却までに時間を要することが少なくありません。

農地のまま売却できる主な相手先
  • 農地法3条許可要件を満たす農業従事者(個人)
  • 農地所有適格法人(農業法人)
  • 農地中間管理機構(農地バンク)に買取・仲介を依頼する方法もある
  • 市町村や農業協同組合が買い受ける場合もある

農地中間管理機構(農地バンク)とは、農地を借りたい農業者と貸したい土地所有者をマッチングする公的機関です。売却だけでなく貸し出しにも活用でき、管理が難しい遠方の農地への対処手段として有効です。まずは地域の農地中間管理機構に相談してみることをおすすめします。

農地転用を前提とした売却(農地法4条・5条)

農地転用を前提に売却する場合は、宅地や駐車場など将来の用途を想定しながら、転用の可否と必要な手続きを事前に整理しておくことが欠かせません。農地転用は、原則として都道府県知事や指定市町村等の許可を受ける必要があり、農地の立地や周辺の土地利用状況によって許可の難易度が異なります。一方で、市街化区域内の一部の農地など、農業委員会への届出のみで転用できる場合もあります。同じ地目でも区域区分や計画道路の有無などによって評価や価格に差が生じるため、地目だけでなく用途地域や農用地区域の指定状況も総合的に確認しましょう。

⚠ 転用前提売却のリスクに注意
  • 転用許可が下りないと売却自体が成立しない可能性がある
  • 転用許可申請から結果が出るまで数ヶ月〜1年以上かかる場合がある
  • 農用地区域(農振農用地)に指定されている農地は原則として転用不可
  • 転用後に売却するまでの間は固定資産税等の負担が継続する

高価売却のための価格査定・タイミングの考え方

高価売却を目指す相続人にとっては、まず公的資料や公表データを用いて、農地転用の可否や周辺の地価水準などの情報を丁寧に収集する姿勢が重要になります。路線価や固定資産税評価額、公示地価など複数の指標を参考にしながら、農地としての価値と転用後の潜在的な価値を比較し、価格査定の目安を持つことが役立ちます。


農地の価格を把握する主な方法
  • 公示地価・基準地価:国土交通省・都道府県が公表する土地価格の目安
  • 路線価:国税庁が公表する相続税評価の基準(公示地価の約80%水準)
  • 固定資産税評価額:市区町村が決定する評価額(公示地価の約70%水準)
  • 農地の売買実例:農業委員会や農地中間管理機構から情報収集
  • 不動産鑑定評価:最も正確だが費用(数十万円程度)がかかる
  • 複数の不動産会社への査定依頼:農地・土地専門の業者に依頼する

また、農地転用許可に要する期間や、地価動向、相続税や譲渡所得税の負担見通しを踏まえて、売却のタイミングを計画的に検討することも欠かせません。短期的な価格だけでなく、維持管理の負担や税負担の増減も含めて総合的に判断することで、相続人にとって納得度の高い売却につながりやすくなります。

検討項目主な確認内容高価売却への効果
権利関係と地目登記名義・地目・現況整合手続き遅延の防止・信頼性向上
農地転用の可否用途地域・農用地区域指定確認転用余地による価値向上・買い手の拡大
価格指標の収集公示地価・路線価・評価額適正価格での交渉・過小売却の防止
価格と時期の検討地価水準・税負担の予測有利な売却タイミングの把握
専門家への相談不動産鑑定士・農地専門業者見落としリスクの低減・交渉力強化

不動産会社・専門家の選び方

農地売却を進める際は、農地や土地取引に精通した不動産会社や専門家を選ぶことが重要です。農地は一般の住宅地と異なり、農地法・農業委員会・農地転用などの専門知識が不可欠です。

不動産会社を選ぶポイント
  • 農地・土地の取引実績が豊富か
  • 農地転用・農地法に詳しいか
  • 地元の農業委員会との連携があるか
  • 複数社から査定を取って比較する
相談すべき専門家
  • 司法書士:相続登記の申請
  • 行政書士:農地法の許可申請
  • 税理士:相続税・譲渡所得税対策
  • 不動産鑑定士:農地の価格評価

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農地転用の許可要件と相続人が押さえたい基本ポイント

農地転用とは、農地を農業以外の目的(住宅・駐車場・工場・太陽光発電など)に利用するために農地の性質を変更することです。農地転用には原則として許可が必要であり、許可なく転用することは農地法違反となります。農地を相続して活用・売却を考えるなら、農地転用許可の仕組みを正確に理解することが欠かせません。

農地法4条・5条の違いと許可のしくみ

農地法4条は「自分の農地を自ら転用する場合」に許可が必要になる規定です。例えば、農家が自分の畑に自宅を建てる場合などがこれにあたります。一方、農地法5条は「転用を目的として権利移転や賃貸借を行う場合」に許可が必要になる規定です。農地を売却して買主が転用する場合はこちらが適用されます。いずれも無許可転用は農地法違反となり、原状回復命令・罰則の対象となります。

農地法4条・5条の使い分け
  • 農地法4条:自分の農地を自ら転用する → 所有者自身が転用・開発するケース
  • 農地法5条:農地を売買・貸借して相手が転用する → 売却して買主が宅地化するケース
  • いずれも無許可転用は農地法違反(原状回復命令・罰則あり)
  • 市街化区域内農地は届出のみで対応できる場合がある(詳細は次項)

許可の審査では、農地の立地や周辺状況を踏まえた「立地基準」と、事業の必要性・施設の規模・周辺農地への影響などをみる「一般基準」が用いられます。両方の基準をクリアして初めて転用許可が下ります。

市街化区域・市街化調整区域・農用地区域の違い

農地転用の可否や手続きは、農地が都市計画上どの区域に属しているかで大きく異なります。この区分の理解が、農地の活用・売却を検討するうえで最も重要なポイントのひとつです。

区分転用の基本的な扱い手続き相続人の確認ポイント
市街化区域内農地届出のみで転用可能な場合が多い農業委員会への届出(原則)都市計画図で区域と地目確認・住宅地化の可能性大
市街化調整区域内農地許可制・開発が制限される農地法4条・5条の許可申請立地基準・一般基準の該当性確認
農用地区域(農振農用地)内農地原則転用不許可農振除外申請→農地法許可申請農用地区域指定の有無と農振除外の可能性
都市計画区域外農地許可制(比較的審査は緩やか)農地法4条・5条の許可申請立地基準の確認・優良農地かどうかの判断
⚠ 農用地区域(農振農用地)の落とし穴

農業振興地域の農用地区域に指定された農地は、農地法上の転用規制よりさらに厳しい制限を受けます。転用するには、まず農業振興地域整備計画の変更(農振除外)を申請する必要があり、この手続きに1年以上かかるケースもあります。農振農用地かどうかは、市区町村の農林担当窓口で確認できます。

転用許可の審査基準(立地基準・一般基準)

農地転用許可の審査は「立地基準」と「一般基準」の2段階で行われます。

立地基準(農地の種別による判断)
  • 農地を農業生産性の観点から区分(第1種〜第3種農地など)
  • 第1種農地(優良農地):原則不許可
  • 第2種農地:周辺農地や代替地の検討が必要
  • 第3種農地(市街地周辺):原則許可
  • 農用地区域農地:原則不許可(農振除外が先決)
一般基準(事業内容・影響の判断)
  • 転用の確実性(事業計画が具体的かどうか)
  • 周辺農地への悪影響がないか
  • 水利施設への影響がないか
  • 必要最小限の面積であるか
  • 農地の集団化(まとまった農地の保全)を阻害しないか

農地転用の手続きの流れと期間

農地転用許可申請から許可取得までの一般的な流れを把握しておくことで、売却のスケジュールを立てやすくなります。

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事前確認・相談(1〜2ヶ月)

農地が属する区域の確認、転用の可否の事前相談を農業委員会・市区町村窓口で行います。行政書士への依頼を検討するのもこの段階です。

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農振除外申請(農用地区域の場合・6ヶ月〜1年以上)

農用地区域の指定を受けている場合は、まず農振除外の申請が必要。年2回程度の受付が多く、結果が出るまでに長期間かかります。

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農地転用許可申請(申請〜許可まで2〜4ヶ月)

申請書・位置図・計画書などの書類を準備し、農業委員会に申請。農業委員会が審査し、都道府県知事等が許可を判断します。

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許可取得・転用工事・売却

許可取得後、転用工事(造成・地盤改良など)を実施。宅地などに転用した後、不動産市場に売り出します。

売買契約と農地転用許可の順序に注意

農地法5条(転用目的の売買)の場合、売買契約は「農地転用許可を条件とする停止条件付き」で締結するのが一般的です。許可が下りた時点で売買が成立する形にすることで、許可が得られなかった場合のリスクをコントロールできます。この点は不動産会社や行政書士に必ず確認しましょう。


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農地相続と税金・費用のリスク管理と長期的な判断軸

農地相続に関わる税金は複数あり、相続税・譲渡所得税・住民税・固定資産税などが場面によって発生します。税負担を正しく見積もることが、保有か売却かという長期的な判断を下すうえでの重要な基盤となります。

相続税と農地の納税猶予制度

農地を相続すると、遺産全体に対して相続税が課税されます。相続税は「遺産総額−基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)」がプラスになる場合に申告・納税が必要です。

特に注目したいのが、相続税の納税猶予制度(農地等に係る相続税の納税猶予)です。一定の要件を満たす農業相続人が農地等を取得した場合には、農地等のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税額の納税を、農業の継続などを条件として猶予する仕組みです。

相続税の農地納税猶予制度の主な要件
  • 被相続人が農業を営んでいたこと(または特定貸付を行っていたこと)
  • 相続人が農業経営を継承し、農業を継続すること
  • 農地が農用地区域内にある場合や、生産緑地などであること(地域・種別により異なる)
  • 相続税の申告期限(10ヶ月以内)までに申告書を提出すること
  • 農業を廃止したり農地を売却・転用した場合は猶予税額の全部または一部を納付する必要あり
⚠ 納税猶予制度の注意点

納税猶予制度は強力な節税策ですが、農業を継続する意向がなければ適用できません。また、猶予を受けた後に農業を廃止したり農地を売却・転用した場合、猶予されていた相続税額に加えて利子税も支払う必要があります。制度の適用を検討する場合は、必ず税理士に相談のうえ、長期的な農業継続の意思を確認してから判断しましょう。

農地売却時の譲渡所得税・住民税

相続した農地を売却するときには、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。

譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 収入金額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除額

  • 収入金額:売却代金
  • 取得費:農地の購入代金(相続の場合は被相続人の取得費を引き継ぐ)。不明な場合は売却代金の5%とみなせる
  • 譲渡費用:仲介手数料・登記費用・測量費など売却にかかった費用
  • 特別控除額:一定の要件(収用・農地の買換えなど)を満たす場合に適用
区分所有期間所得税率住民税率合計税率
短期譲渡所得5年以下(相続取得年含む)30%9%39%(+復興税)
長期譲渡所得5年超15%5%20%(+復興税)
相続農地の「所有期間」の考え方

相続した農地の所有期間は、被相続人(亡くなった方)が取得した日から起算します。例えば、被相続人が30年前に取得した農地を相続した場合、相続した年に売却しても「長期譲渡所得(5年超)」として低い税率が適用されます。これは相続農地を売却する際の重要な節税ポイントです。

また、農地を農地転用して宅地として売却した場合、宅地転換後の価格(宅地としての売却価格)が収入金額となるため、農地のまま売却するよりも売却益が大きくなり、それに伴い譲渡所得税も増える可能性があります。税負担と売却価格を総合的に比較することが重要です。

保有し続ける場合の固定資産税・管理費用

農地を保有し続ける場合は、固定資産税や管理費用が毎年発生する点も見逃せません。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税され、評価額や土地の区分に応じて税額が決まります。農地の固定資産税は宅地と比べて低く設定されていることが多いですが、市街化区域内の農地については宅地並みの課税となるケースがあります。

農地を保有するコスト
  • 固定資産税(毎年)
  • 草刈り・農地管理費用(毎年数万円〜)
  • 境界管理・フェンス等の維持費
  • 場合によっては農業保険・水利組合費
  • 将来の地価下落リスク
早期売却で得られること
  • 将来の税負担・管理コストの解消
  • まとまった資金の確保
  • 相続人間のトラブル防止
  • 精神的な負担の軽減
  • 遠方居住の場合は特に効果的

一方、早期に売却すれば将来の税負担や管理コストを抑えられますが、今後の価格上昇の利益を得られないという側面もあります。双方のメリット・デメリットを数字で比較することが、納得度の高い判断につながります。


ライフプランに合わせた長期的判断軸

農地相続への向き合い方は、相続人それぞれのライフプランや家族構成、将来の居住予定などによって大きく変わります。

ライフプラン別の検討ポイント
  • 就農を続ける・引き継ぐ意向がある場合:相続税の納税猶予制度の活用・農地中間管理機構との連携・規模拡大との整合性を検討
  • 農業を継ぐ予定がなく遠方に住んでいる場合:管理負担・固定資産税を総合的に考え、早期売却や農地中間管理機構への貸出しも選択肢に
  • 将来の地価上昇が見込まれる地域にある場合:保有期間と税負担のバランスを見極め、転用後の高価売却タイミングを計画的に検討
  • 複数の相続人がいる場合:共有名義のまま放置するとトラブルの元になるため、早めに分割方針を決定する
選択肢主なメリット主なリスク・注意点向いているケース
農地として保有・継続将来の活用余地確保・納税猶予制度の活用固定資産税と管理費用の継続負担就農継続の意向あり・地価上昇期待
農地中間管理機構に貸出賃料収入・管理負担の軽減将来の転用・売却に制限が生じる場合あり農業を続けない・遠方在住
農地のまま売却早期の資金化と負担軽減買い手不足・価格低下・農地法許可手続き急ぎの資金化が必要・農業従事者が近くにいる
農地転用後に売却用途変更による高価売却・買い手の拡大転用許可・工事費用・期間負担・税負担増加市街化区域内・転用見込みが高い農地

いずれの道を選ぶにしても、税務署や専門家への相談を通じて税金と費用の見通しを把握し、家族で十分に話し合ったうえで長期的な判断軸を持つことが重要です。「正解」は農地の場所・区域・家族の状況によって異なります。まずは情報収集と専門家への相談から始めましょう。


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まとめ

農地相続は、農地法相続登記農地転用許可・税金など複雑な手続きとリスクが絡みます。むやみに保有や相続後売却を進めると、税金や管理費用、転用不許可による損失など、大きな負担を抱える可能性があります。一方で、事前調査や適切な手法を選ぶことで、高価売却や有利な活用につなげることも十分可能です。大切なのは、農地の区域・現況・家族のライフプランを総合的に把握したうえで、専門家の力を借りながら計画的に進めることです。

農地相続で押さえるべき重要ポイント

  • まず農地か宅地かを確認し、農地法・相続登記・農業委員会届出の3つの基礎を把握する
  • 相続登記は令和6年4月から義務化(3年以内)。農業委員会届出(農地法第3条の3)も忘れずに
  • 農地のまま売却 vs 農地転用して売却、それぞれのメリット・デメリットを比較する
  • 高価売却には公示地価・路線価・複数社査定などで相場を把握することが重要
  • 農地が属する区域(市街化区域・農用地区域等)によって転用難易度が大きく異なる
  • 農地法4条・5条の違いを理解し、停止条件付き売買契約でリスクを管理する
  • 相続税の農地納税猶予制度は農業継続が条件。税理士への相談が必須
  • 農地売却時の譲渡所得税は所有期間5年超で税率が大幅に下がる(長期譲渡所得)
  • 保有コスト(固定資産税・管理費)vs 売却益・税負担を数字で比較して判断する
  • ライフプランに合わせた長期的な判断軸を持ち、家族で十分に話し合う

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